施工管理を調べると、必ず出てくるのが「きつい」「休めない」という話です。だから就活では、残業時間や有給の取得日数を会社ごとに比べたくなります。
ところが、空調サブコン8社の有価証券報告書を読むと、残業時間を載せている会社は1社もありませんでした。 有給取得率や離職率も、出している会社と出していない会社があり、定義もばらばらです。
一方で、法律で計算方法が決まっていて、8社すべてが載せている数字が3つあります。2026年3月期の有価証券報告書と、マイナビ2027の採用データから、比べられる数字と比べられない数字を分けて整理しました。
この記事でわかること:
- 8社とも載せているのは、女性管理職比率・男性育休取得率・男女の賃金差の3つ。男性育休取得率は42.5%から122.0%まで開きがある
- ただし男性育休には計算式が2通りあり、どちらを使うかは会社ごとに違う
- 残業時間・有給取得率・離職率は任意の開示で、8社を横に並べられない
先に結論を書きます。8社の働き方を同じ物差しで比べられる公開データは、思ったより少ないです。 残業や休みの実態は、説明会や面談で「施工管理職の」数字を聞くしかありません。
年間休日は120〜127日
まず、採用データに載っている年間休日です(ダイダンは日数の記載なし)。
| 会社 | 年間休日 |
|---|---|
| 新日本空調 | 127日 |
| 日比谷総合設備 | 124日 |
| テクノ菱和 | 124日 |
| 三機工業 | 123日 |
| 朝日工業社 | 123日 |
| 大気社 | 123日 |
| 高砂熱学工業 | 120日 |
7社の幅は7日で、どこも土日祝が休みの会社とほぼ同じ水準です。ただしこれは会社のカレンダー上の休日です。施工管理は現場の工程に合わせて土曜に出る日があり、振替休日を取りきれるかは現場次第です。年間休日の多さが、そのまま休める日数になるわけではありません。
8社とも載せている3つの数字
上場企業は、有価証券報告書の「従業員の状況」に、次の3つを載せることになっています。どれも法律で計算方法が決まっています。
| 会社 | 女性管理職比率 | 男性育休取得率 | 男女の賃金差(全労働者) |
|---|---|---|---|
| 日比谷総合設備 | 5.8% | 100.0% | 67.6% |
| テクノ菱和 | 5.2% | 60.0% | 55.7% |
| 新日本空調 | 5.1% | 96.2% | 65.1% |
| ダイダン | 4.2% | 42.5% | 58.5% |
| 大気社 | 3.8% | 69.0% | 63.4% |
| 高砂熱学工業 | 3.5% | 101.7% | 62.9% |
| 三機工業 | 2.3% | 122.0% | 60.4% |
| 朝日工業社 | 1.5% | 50.0% | 66.5% |
男女の賃金差は、男性の平均賃金を100としたときの女性の平均賃金の割合です。
女性管理職比率は1.5%から5.8%で、8社とも1桁です。高砂熱学工業、三機工業、日比谷総合設備、ダイダン、大気社は「同じ等級(職務)なら男女の賃金差はない」と注記しており、賃金差の主な理由は、管理職や上位の等級に女性が少ないことだと説明しています。
男性育休は計算式が2通りある
8社で最も差が大きいのが男性育休取得率で、42.5%から122.0%まで開いています。ただ、この数字はそのまま比べられません。
法律の施行規則には、男性育休取得率の計算式が2つ用意されていて、会社はどちらかを選んで載せます。
- 育児休業等の取得割合:育児休業を取った人だけを数える
- 育児休業等と育児目的休暇の取得割合:育児休業に加えて、子育てのために会社独自で設けた休暇(配偶者出産休暇など)を取った人も数える
後者のほうが、数える人が多くなるので高く出ます。各社の注記を読むと、選び方は割れていました。
| 会社 | 男性育休取得率 | 注記にある計算の範囲 |
|---|---|---|
| 三機工業 | 122.0% | 施行規則の第2号(ただし文言は「育児休業等の取得割合」) |
| 高砂熱学工業 | 101.7% | 育児休業等と育児目的休暇 |
| 日比谷総合設備 | 100.0% | 育児休業等と育児目的休暇 |
| 新日本空調 | 96.2% | 育児休業等 |
| 大気社 | 69.0% | 育児休業等 |
| テクノ菱和 | 60.0% | 育児休業等と育児目的休暇(ただし号数は第1号と記載) |
| 朝日工業社 | 50.0% | 育児休業等 |
| ダイダン | 42.5% | 育児休業等(育児目的休暇を含めないと明記) |
2社は、号数と文言の組み合わせが施行規則の書き方と食い違っていて、どちらで計算したのか注記だけでは判断できませんでした。
育児休業だけで数えている新日本空調の96.2%は、休暇を含めた会社と並ぶ水準です。逆に、休暇を含めない会社の数字は、低く見えても実態が悪いとは限りません。
100%を超えるのはなぜか
三機工業と高砂熱学工業は100%を超えています。分母は「その年度に子どもが生まれた男性社員」、分子は「その年度に育休を取った男性社員」です。前の年度に子どもが生まれて、この年度に育休を取った人も分子に入るので、100%を超えることがあります。
1週間以上かどうかでも変わる
高砂熱学工業は注記で、1週間以上の育休を取った人だけを数えると93.3%になると書いています。表の101.7%は1日以上で数えた数字です。取得率が高くても、数日だけの取得が多いのか、数週間以上が多いのかは、この数字からはわかりません。気になる会社には、男性の平均取得日数を聞いてみてください。
残業時間・有給・離職率は比べられない
ここからは、各社が任意で載せている数字です。8社のうち、2026年3月期の有価証券報告書で見つかったものを並べます。
| 会社 | 載せている数字 | 値 |
|---|---|---|
| 三機工業 | 自己都合の離職率(2025年度) | 全体1.3%、20代2.2% |
| ダイダン | 離職率(2025年度) | 2.4% |
| 日比谷総合設備 | 新入社員の入社後3年間の定着率 | 93.1% |
| テクノ菱和 | 有給休暇取得率(2025年度) | 63% |
| 新日本空調 | 法定時間外労働が月60時間以上になった職員(年間延べ) | 246名(前年度141名) |
| 高砂熱学工業、朝日工業社、大気社 | 今回確認した範囲では、残業・有給・離職の数値なし | — |
見ての通り、指標も定義もそろっていません。三機工業は自己都合の退職だけ、日比谷総合設備は新入社員だけ、新日本空調は残業が多かった人の延べ人数です。数字を出している会社が働きやすく、出していない会社が働きにくい、ということでもありません。
新日本空調の246名という数字は、前年度から増えています。ただ、これを自ら開示していること自体は、長時間労働を把握して減らそうとしている表れとも読めます。同じ数字を出していないほかの7社が多いのか少ないのかは、比べようがありません。
2024年4月から建設業にも残業の上限がある
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間で、特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内という上限があります。
つまり、どの会社に入っても、法律上の上限は同じです。会社ごとの違いが出るのは、その上限に対してどれくらい余裕を持って運用しているか、です。そこは公開データでは見えません。
説明会で聞くといい質問
公開データで比べられない部分は、直接聞くしかありません。聞くときは、全社平均ではなく「施工管理職の」数字を聞くのがポイントです。全社平均には、残業の少ない事務職や研究職も含まれるからです。
- 施工管理職の月平均残業時間は何時間か。繁忙期(竣工前)はどのくらいか
- 現場の休日は「4週8休」が実現できているか。できていない現場の割合は
- 土曜出勤の振替休日は、実際にどのくらい取れているか
- 男性の育休の平均取得日数はどのくらいか
- 新卒の3年後定着率(または離職者数)はどのくらいか
数字で答えてくれるかどうかも、会社を見る材料になります。
よくある質問
残業時間を比べられるデータはどこにもないのですか
厚生労働省の「しょくばらぼ」や、就職情報サイトの企業ページに、月平均の所定外労働時間を載せている会社があります。ただし全社平均の数字で、施工管理職だけの数字ではありません。有料の就職四季報にも残業時間の欄がありますが、未回答の会社もあります。
女性管理職比率が低い会社は、女性が働きにくいのですか
8社とも1〜6%で、業界全体で低い状態です。会社ごとの差より、業界として女性の技術者が少ないことの影響が大きいと考えられます。各社とも女性管理職比率の目標を掲げているので、目標と取り組みの中身を比べるほうが参考になります。
年間休日が多い会社のほうが休めますか
カレンダー上の休日は多くても、現場の工程によって休日出勤があります。年間休日と、振替休日の取得状況はセットで聞いてください。
まとめ
- 8社とも載せているのは女性管理職比率(1.5〜5.8%)、男性育休取得率(42.5〜122.0%)、男女の賃金差(55.7〜67.6%)の3つ
- 男性育休取得率は、育児目的休暇を含めるかどうかで計算式が2通りあり、会社ごとに選び方が違う。数字の大小だけでは比べられない
- 残業時間・有給取得率・離職率は任意の開示で、指標も定義もそろっていない。残業時間を載せている会社はなかった
- 年間休日は120〜127日。施工管理の実際の休みは、振替休日の取り方次第
働き方は、施工管理を選ぶうえで一番知りたいことなのに、公開データで一番比べにくい部分でした。説明会では、全社平均ではなく施工管理職の数字を聞いてみてください。
この記事で確認したもの
対象:8社(高砂熱学工業、三機工業、朝日工業社、日比谷総合設備、ダイダン、大気社、新日本空調、テクノ菱和)の2026年3月期の有価証券報告書のうち「従業員の状況」と「サステナビリティに関する考え方及び取組」。年間休日はマイナビ2027の採用データ(技術系コース)。
時点:2026年10月22日
やったこと:各社の有価証券報告書から、女性管理職比率・男性育休取得率・男女の賃金差(全労働者)と、その注記にある計算の範囲を抜き出しました。あわせて、残業時間・有給・離職率・定着率に当たる記述を探し、数値があるものだけを載せています。大気社の男女の賃金差は、有価証券報告書の63.36%を小数第1位に丸めています。
書かなかったこと:統合報告書やサステナビリティサイトにだけ載っている数字は、今回は確認していません。高砂熱学工業・朝日工業社・大気社の「数値なし」は、有価証券報告書の範囲での話で、ほかの資料で開示している可能性があります。連結子会社の数字は、8社で載せ方が違うため外しました。
