サブコンの年収を調べると、「平均年収ランキング」がすぐ見つかります。どれも有価証券報告書の数字なので、間違ってはいません。
ただ、1年分だけを並べたランキングで会社を比べると、順位を読み違えます。同じ8社を3年分並べると、2年で7位から2位に上がった会社がある一方、2年続けて1位だった会社が6位になっていました。
上場している空調・衛生サブコン8社の有価証券報告書から、平均年間給与を3年分並べ直しました。
この記事でわかること:
- 8社の平均年間給与(2026年3月期)は1,092万円から1,246万円
- 単年の順位は大きく動く。3年平均で並べると、上位2社の差は2万円足らず
- 年収の伸びは利益の伸びとよく連動していて、8社での相関係数は0.86
先に結論を書きます。8社の平均年収は、どこも1,000万円台の前半に収まっていて、差は年ごとの利益で入れ替わる程度です。 就職先を年収ランキングの順位で選ぶ意味はあまりありません。
2026年3月期は1,092万円から1,246万円
まず、最新の2026年3月期の数字です。有価証券報告書の「従業員の状況」に載っている平均年間給与で、提出会社(単体)の社員が対象です。
| 会社 | 平均年間給与 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) |
|---|---|---|---|---|
| 高砂熱学工業 | 1,246万円 | 41.5歳 | 14.7年 | 2,469人 |
| 三機工業 | 1,228万円 | 42.5歳 | 18.1年 | 2,128人 |
| 朝日工業社 | 1,216万円 | 44.6歳 | 17.8年 | 1,080人 |
| 日比谷総合設備 | 1,183万円 | 45.1歳 | 18.4年 | 815人 |
| ダイダン | 1,177万円 | 41.5歳 | 15.8年 | 2,185人 |
| 大気社 | 1,160万円 | 42.0歳 | 15.2年 | 1,824人 |
| 新日本空調 | 1,094万円 | 43.3歳 | 15.9年 | 1,256人 |
| テクノ菱和 | 1,092万円 | 44.0歳 | 15.0年 | 856人 |
最も高い会社と低い会社の差は154万円です。8社の単純平均は1,174万円でした。
この表だけを見ると、上から順に「待遇のいい会社」に見えます。ここから先は、その見方がどれくらい当てにならないかを数字で確かめます。
3年並べると順位が入れ替わる
同じ8社の2024年3月期から2026年3月期までを並べます。
| 会社 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 順位の動き |
|---|---|---|---|---|
| 高砂熱学工業 | 1,029万円 | 1,129万円 | 1,246万円 | 2位→2位→1位 |
| 三機工業 | 878万円 | 1,078万円 | 1,228万円 | 7位→4位→2位 |
| 朝日工業社 | 1,012万円 | 1,090万円 | 1,216万円 | 3位→3位→3位 |
| 日比谷総合設備 | 1,009万円 | 963万円 | 1,183万円 | 4位→8位→4位 |
| ダイダン | 905万円 | 1,066万円 | 1,177万円 | 6位→5位→5位 |
| 大気社 | 1,068万円 | 1,181万円 | 1,160万円 | 1位→1位→6位 |
| 新日本空調 | 955万円 | 985万円 | 1,094万円 | 5位→6位→7位 |
| テクノ菱和 | 810万円 | 980万円 | 1,092万円 | 8位→7位→8位 |
三機工業は2年で878万円から1,228万円へ、350万円上がって7位から2位になりました。日比谷総合設備は1年で8位まで下がり、翌年に4位へ戻っています。2年続けて1位だった大気社は、2026年3月期に6位でした。
3年とも同じ順位だったのは朝日工業社だけです。
3年平均なら上位2社の差は2万円足らず
単年の上下をならすため、3年分の平均を取りました。
| 順位 | 会社 | 3年平均 |
|---|---|---|
| 1 | 大気社 | 1,136万円 |
| 2 | 高砂熱学工業 | 1,135万円 |
| 3 | 朝日工業社 | 1,106万円 |
| 4 | 三機工業 | 1,061万円 |
| 5 | 日比谷総合設備 | 1,052万円 |
| 6 | ダイダン | 1,049万円 |
| 7 | 新日本空調 | 1,011万円 |
| 8 | テクノ菱和 | 961万円 |
2026年3月期だけのランキングとは、1位も2位も4位も変わります。上位2社の差は1.7万円で、事実上並んでいます。どの年で切るかで順位が入れ替わる、というのがこの8社の実態です。
年収の差は利益の差で動く
なぜここまで順位が動くのか。有価証券報告書の平均年間給与には、賞与と残業代などの基準外賃金が含まれます。そしてサブコン各社の賞与は、業績に応じて変わります。
2024年3月期から2026年3月期にかけての、連結純利益の伸びと平均年間給与の伸びを並べました。
| 会社 | 純利益(2024→2026年3月期) | 平均年間給与の伸び |
|---|---|---|
| ダイダン | 91億円→268億円(+195%) | +30.1% |
| 三機工業 | 90億円→237億円(+163%) | +39.9% |
| テクノ菱和 | 45億円→118億円(+162%) | +34.8% |
| 朝日工業社 | 37億円→92億円(+149%) | +20.2% |
| 高砂熱学工業 | 196億円→375億円(+91%) | +21.1% |
| 日比谷総合設備 | 48億円→87億円(+81%) | +17.2% |
| 新日本空調 | 72億円→122億円(+69%) | +14.6% |
| 大気社 | 156億円→156億円(±0%) | +8.6% |
利益が大きく伸びた会社ほど、年収も大きく伸びています。8社で2つの伸び率の相関係数を計算すると0.86でした。8社だけの計算なので強い結論は出せませんが、傾向ははっきりしています。
大気社の動きもこれで説明がつきます。純利益は2024年3月期の156億円から2025年3月期に110億円へ下がり、2026年3月期に156億円へ戻りました。年収のほうは2025年3月期に上がり、2026年3月期に少し下がっています。賞与が業績を1年遅れで反映していると考えると、つじつまが合います。
逆に言えば、いまの年収の順位は、ここ1〜2年の業績の順位に近いものです。入社してから10年、20年働く会社を選ぶ材料としては、変わりやすい数字だと考えたほうが安全です。
業界全体が上がっている
8社の単純平均は、2024年3月期の958万円から、2025年3月期に1,059万円、2026年3月期に1,174万円へ上がりました。2年で216万円の上昇です。
最も高い会社と低い会社の差は、2024年3月期の258万円から、2026年3月期には154万円に縮んでいます。半導体工場やデータセンターの需要で業界全体の業績が伸び、どの会社も賞与が増えた結果です。
ランキングを読むときの注意点3つ
1. 平均年齢の差は小さい
平均年齢は41.5歳から45.1歳で、差は3.6歳です。年齢が高い会社ほど年収が高い、という関係も8社では見られませんでした(相関係数は−0.26)。この8社については、平均年齢の違いで順位を補正する必要はあまりありません。
ただし、どの会社も「平均42〜45歳の社員の平均」です。新卒1年目の年収とはまったく別の数字なので、初任給は空調サブコン8社の初任給を比べた記事で確かめてください。
2. 単体の数字で、グループ全体ではない
有価証券報告書の平均年間給与は、提出会社(単体)の社員だけが対象です。子会社や海外の拠点で働く人は含まれません。
連結の従業員数を単体で割ると、高砂熱学工業と大気社は3.0倍、ほかの6社は1.1〜1.4倍です。この2社はグループの社員の3分の2ほどが単体の外にいて、平均年収の表には出てきません。グループで働く人全体の待遇を表す数字ではない、という点は押さえておいてください。
3. 事務職も管理職も含まれる
平均年間給与は、技術職と事務職、若手と管理職をすべて合わせた平均です。職種別の内訳は有価証券報告書には載っていません。施工管理職だけの年収は、この数字からはわかりません。
よくある質問
サブコンの平均年収はゼネコンより低いのですか
この8社は2026年3月期で1,000万円を超えています。ゼネコンとの比較はこの記事では扱っていませんが、比べるときも同じ年度・同じ定義(単体の平均年間給与)で揃える必要があります。
平均年収が高い会社ほど、新卒の給料も高いですか
そうとは限りません。平均年間給与は平均年齢42〜45歳の社員の平均で、業績連動の賞与を大きく含みます。新卒の月給は初任給として別に決まっているので、募集要項で比べてください。
有価証券報告書はどこで見られますか
金融庁のEDINETで、社名を入れて検索すると無料で読めます。平均年間給与は「第1 企業の概況」の「従業員の状況」に載っています。
まとめ
- 空調・衛生サブコン8社の平均年間給与は、2026年3月期で1,092万円から1,246万円
- 単年の順位は大きく動く。2年で7位から2位、2年連続1位から6位、という動きがあった。3年平均では上位2社の差は2万円足らず
- 年収の伸びは利益の伸びとよく連動している(相関係数0.86)。順位は「直近の業績の順位」に近い
- 単体の数字で、事務職・管理職も含む平均。新卒の待遇や施工管理職だけの年収は、この数字からはわからない
就職先を選ぶときは、平均年収の順位よりも、どんな建物の仕事が多いか、資格の取得をどう支援しているか、休日と残業の実績はどうか、を比べたほうが判断材料になります。休日と残業の数字は空調サブコン8社の働き方を比べた記事にまとめています。
この記事で確認したもの
対象:上場している空調・衛生設備工事会社8社(高砂熱学工業、三機工業、朝日工業社、日比谷総合設備、ダイダン、大気社、新日本空調、テクノ菱和)の有価証券報告書「従業員の状況」と連結純利益。2024年3月期〜2026年3月期の3年分。
時点:2026年10月22日
やったこと:各社の平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数・従業員数(単体・連結)と連結純利益を3年分並べ、順位、3年平均、2年間の伸び率、伸び率どうしの相関係数を計算しました。万円未満は四捨五入した値で計算しています。8社の選び方は、上場している設備工事会社のうち、空調・給排水衛生が主力の会社です(大気社は自動車工場向けの塗装システムも主力の一つです)。2026年3月期の平均年間給与は、各社の有価証券報告書の記載額と照合しています。
書かなかったこと:電気設備が主力の会社(関電工、きんでんなど)は、事業の中身が違うため外しました。非上場の会社(新菱冷熱工業など)は有価証券報告書がないため含めていません。職種別・年齢別の年収は公表されていないので、推計値も載せていません。他サイトにある「年代別の年収」は、公表データからの推計であることが多いため使っていません。
