社労士の副業は可能?就業規則より先に、登録区分で決まる部分がある

社労士の転職

社労士の資格を取ったあと、勤務先に籍を置いたまま副業で仕事を受けたい。

この話は、たいてい勤務先の就業規則しだい、で終わります。

でも社労士には、その手前にもう1段あります。就業規則より先に、社労士法で決まっている部分です。

条文を読みました。

この記事でわかること

  • 副業してよいかが2階建てで決まる理由
  • 勤務登録のままでは受けられない仕事があること
  • 厚生労働省のモデル就業規則が、許可制から届出制に変わっていること

報酬をもらって他人の社労士業務を受けるには、事務所を定めて先に登録しておく必要があります。勤務先の許可だけでは足りません。

副業の可否は2階建てになっている

社労士の副業には、確認すべき階層が2つあります。

何で決まるか確認先
1階:社労士法登録区分と業務の範囲所属する都道府県会
2階:勤務先の規程副業の届出・禁止事由勤務先の就業規則

よく語られるのは2階の話です。ただ、1階でつまずくと2階の話は関係なくなります。順番として、まず1階から確認してください。

社労士法が定めている登録の区分

社会保険労務士法第14条の2は、登録について3つの項に分けて定めています。

2 他人の求めに応じ報酬を得て、第2条に規定する事務を業として行おうとする社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員となろうとする者を含む。)は、事務所(中略)を定めて、あらかじめ、社会保険労務士名簿に、前項に規定する事項のほか、事務所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

3 事業所(中略)に勤務し、第2条に規定する事務に従事する社会保険労務士(以下「勤務社会保険労務士」という。)は、社会保険労務士名簿に、第1項に規定する事項のほか、当該事業所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

第2項が開業の登録、第3項が勤務の登録です。

第3項の勤務社会保険労務士は、「事業所に勤務し」、その事務に従事する人と書かれています。他人から報酬を得て引き受ける話は、第2項のほうです。

しかも第2項には、あらかじめ、とあります。仕事を受けてから登録するのではなく、登録が先。

登録事項に変更が生じたときは、遅滞なく変更の登録を申請する(第14条の4)とも定められています。

勤務等17,291人が副業しようとすると起きること

全国社会保険労務士会連合会の登録データ(2025年3月31日現在)では、勤務等の登録者は17,291人。全体の37.4%です。

この区分のまま社労士業務の副業を始めようとすると、開業の登録が必要になります。手続きとしては変更の登録です。

ここで現実的な問題が2つ出てきます。

1. 会費が発生する

開業で登録すると、入っている都道府県会の会費の区分が変わります。金額は会ごとに違うので、副業を考え始めた段階で所属会の会則を見てください。副業の売上より、会費のほうが高くつくこともありえます。

2. 勤務先に知られる可能性がある

登録は名簿に記載されます。勤務先に伏せたまま進める前提で考えないほうが安全です。

勤務先の規程は「許可制」から「届出制」へ

2階の話です。ここは前提が変わっています。

厚生労働省のモデル就業規則は、副業・兼業について次のように定めています。

(副業・兼業)第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。

禁止・制限できるのは、次の4つの場合に限られています。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 企業秘密が漏洩する場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  • 競業により、企業の利益を害する場合

厚生労働省はこの改正を「許可制から届出制に改正になりました」と説明しています。

ただし、モデル就業規則はあくまでモデルです。自社の就業規則がこの内容になっているとは限りません。「うちは副業禁止だから」と思い込む前に、実際の条文を読んでください。

社労士業務以外なら、登録区分は関係しない

ここまでの話は、社労士法第2条に定められた業務を報酬を得て受託する場合の話です。

それ以外の仕事であれば、登録区分の問題は生じません。

  • 労務分野の執筆・監修
  • セミナー講師、研修の講師
  • 一般企業での事務・給与計算の業務委託(社労士の独占業務にあたらない範囲)
  • 資格試験の受験指導

社労士法第27条は、社労士でない者が他人の求めに応じ報酬を得て第2条第1項第1号から第2号までの事務を業として行うことを制限しています。裏を返せば、その範囲に入らない仕事は、この条文の外です。

どこまでが独占業務にあたるかは判断が分かれる部分です。実際に案件を受ける前に、所属する都道府県会に確認してください。

確認する順番

副業を検討するなら、この順番で進めると手戻りが少なくなります。

1. その仕事が社労士の独占業務にあたるか

あたらないなら、登録区分の変更は不要です。ここで終わる場合も多いはずです。

2. あたるなら、開業の登録に変更したときの費用を出す

都道府県会の会費、賠償責任保険料を年額で書き出し、副業で見込める売上と比べてください。

3. 勤務先の就業規則の副業条項を読む

届出制か許可制か、禁止事由に何が書かれているかを確認します。競業にあたるかどうかは、勤務先が社労士事務所の場合はとくに慎重に見てください。

よくある質問

Q. 勤務登録のまま、知人の会社の手続きを無償で手伝うのはどうですか?

条文は「報酬を得て」「業として」を要件にしています。ただし、無償かどうかの線引きや反復継続性の判断は個別性が高い部分です。実行する前に所属会へ確認してください。

Q. 開業登録にしたら、勤務先を辞める必要がありますか?

必要とは書かれていません。ただし勤務先の就業規則で制限される場合はあります。競業にあたるかどうかが論点になります。

Q. 会費はいくらですか?

所属する都道府県会によって異なります。連合会の会費と都道府県会の会費が別建てになっているため、自分の所属予定会の会則で確認してください。

Q. 副業を経て独立するのは現実的ですか?

登録データを見る限り、そう単純ではありません。この10年で開業の登録は5.7%しか増えておらず、増えたのは法人の社員と勤務等でした。独立と勤務の収入構造を登録データから読んだ記事で詳しく書いています。

まとめ

  • 報酬を得て他人の社労士業務を受けるには、あらかじめ事務所を定めた登録が必要(法第14条の2第2項)
  • 勤務等の登録者は17,291人(37.4%)。副業で受託するなら変更の登録と会費が発生する
  • 厚生労働省のモデル就業規則は許可制から届出制へ。禁止・制限できるのは4つの場合に限られる

副業できるかどうかは、勤務先の空気ではなく条文と会則で決まります。

まず自分がやろうとしている仕事が独占業務にあたるかを整理し、そのうえで所属会に確認してください。

副業ではなく転職で環境を変えるほうが早い場合もあります。求人の探し方は特化型と総合型を求人数から比較した記事で整理しています。

この記事で確認したもの

対象:社会保険労務士法/厚生労働省「モデル就業規則」第70条/社労士の登録区分

時点:2026年8月29日

やったこと:条文と公表資料を突き合わせて、勤務先の就業規則より前に登録区分で決まる部分を整理しました。登録者数は白書2025年版によります。

書かなかったこと:個別の可否判断。運営者は社会保険労務士の有資格者ではなく、この記事は法的な判断ではありません。実際にできるかどうかは、所属する都道府県社会保険労務士会と勤務先に確認してください。


※本記事は条文と公表資料の内容を整理したものであり、個別の事案についての法的判断ではありません。運営者は社会保険労務士の有資格者ではありません。実際の手続きや可否の判断は、所属する都道府県社会保険労務士会および勤務先にご確認ください。

※記事内の条文は社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)、就業規則の記載は厚生労働省「モデル就業規則」第70条および厚生労働省「確かめよう労働条件」の解説、登録者数は全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士白書 2025年版」第2章(2025年3月31日現在)にもとづきます。確認日:2026年8月29日

タイトルとURLをコピーしました