社労士の年収を調べると、記事によって書いてある数字がまるで違います。
400万円台と書いてあるものもあれば、1,000万円超と書いてあるものもある。
どちらも嘘ではありません。数えている対象が違うだけです。
この記事でわかること
- 厚生労働省の同じページに、年収1,134万円と月給28.7万円が並んで載っている理由
- 転職を考えている人が見るべき数字はどれか
- 資格を取れば引く手あまた、は本当か
転職を考えているなら、統計の平均年収は無視してください。見るのは求人票の数字です。
主要な数字の一覧
2026年8月時点で確かめた数字を並べます。
| 出典 | 金額 | 何を数えた数字か |
|---|---|---|
| 厚労省 job tag(賃金構造基本統計調査を加工) | 1,134.6万円 | 在職者の賃金。平均年齢39.4歳 |
| 厚労省 job tag(ハローワーク求人統計) | 月28.7万円 | 実際に募集されている求人の提示賃金 |
| 求人ボックス(求人掲載データの中央値) | 484万円 | 求人サイト掲載求人の給与水準 |
同じ「社労士の年収」でも、出典によって2.3倍の差が出る
求人ベース(これから募集する条件)
開業を含む統計(実際の支給額)
数えている対象が違います。転職で参照すべきは前者です。
同じ厚生労働省のページの中で、年収1,134.6万円と月給28.7万円が並んでいます。
月28.7万円を単純に12倍すると約344万円。賞与を加えても、1,134万円とは3倍前後の開きがあります。
なぜここまで違うのか
差が生まれる理由は3つあります。
1. 「これから募集する条件」と「今もらっている額」は別物
求人票の提示額は、未経験者や経験の浅い人を含めた入口の条件です。
一方、統計の平均年収は、その職業に何年も就いている人を含めた実収入です。
転職で提示されるのは前者。統計の平均を物差しに交渉すると、話がかみ合いません。
2. 統計の職業分類は「社労士だけ」とは限らない
賃金構造基本統計調査の職業分類は、実務上の職種名と一対一で対応していません。高収入の専門職と同じ分類に入ることで、平均が押し上げられている、と考えるのが自然です。
1,134.6万円という数字を「社労士の実態」として読むのは危険です。
3. 開業か勤務かで別の職業になる
開業社労士の収入は事業所得です。顧問契約数がそのまま収入になるため、上限がありません。
勤務社労士は給与所得なので、事務所や企業の給与テーブルの中に収まります。
この2つを混ぜた平均には、あなたが参照できる情報がほとんど含まれていません。
転職者が見るべき数字
答えは求人ボックスの484万円、そして実際の求人票です。
求人ボックスのデータでは、正社員の給与分布のボリュームゾーンが426〜503万円でした。ここが「募集されている条件の現実」です。
地域差は145万円
同じデータで、地域別の差も確認できます。
- 最も高いのは宮城県で502万円
- 最も低いのは鹿児島県で357万円
その差は145万円。経験年数より勤務地のほうが、年収を大きく動かしているように見えます。
リモート勤務可の求人を軸に探すと、この地域差を回避できる場合があります。
地域で違うのは収入だけではありません。都道府県会に払う入会金と年会費も会ごとに決まっていて、開業の場合は10会で88,000円ひらきます。金額は社労士の登録費用と都道府県会ごとの入会金に並べました。
「資格を取れば引く手あまた」は事実か
厚労省のjob tagには、もう一つ見ておきたい数字があります。
社会保険労務士の有効求人倍率は0.85(令和7年度)。
1を下回っています。求人数より求職者数のほうが多い状態です。
資格に価値がない、という話ではありません。ただ、資格さえあれば選び放題、という前提で転職活動を始めると、思っていたのと違う結果になります。
競争がある前提で、経験の見せ方を準備してから動く必要があります。
具体的には、担当した顧問先の社数と規模、扱った業務の範囲(手続きのみか、就業規則の整備や労務相談まで含むか)、使用経験のある給与計算ソフト。この3つを職務経歴書に数字で書けるかどうかで、書類選考の通過率が変わります。求人票の応募要件は抽象的にしか書かれていないため、こちらから具体性を出すしかありません。
年収を上げる方向はどこか
求人票を見ていくと、給与水準が上がりやすい条件が見えてきます。
1. 3号業務(コンサルティング)の経験
1号・2号業務(手続き代行、帳簿作成)は業務が定型化しやすく、単価が上がりにくい領域です。人事制度設計や労務コンサルティングに関わった経験は、求人票の年収レンジを明確に押し上げます。
2. 事業会社の人事・労務職
社労士事務所だけが選択肢ではありません。事業会社の人事部や労務部は、給与テーブルが会社全体の水準に連動するため、大手企業ほど高くなります。
3. 規模の大きい法人
税理士法人や監査法人のグループに属する社労士法人は、給与水準が高めに設定されている求人が目立ちます。外資系クライアントを扱う法人では、英語力が加算要素になります。
どの方向を目指すにしても、まず現在の自分がどのレンジにいるかを把握するのが先です。
自分の相場を確かめる方法
知るべきなのは、世間の平均より、自分の経験がどう評価されるかです。方法は2つあります。
1. 無料の年収査定ツールを使う
社労士特化型の転職サービスには、登録なしで使える年収査定があります。約2分、全11問で、5段階のランクが出ます。
詳しくは社労士JOBの評判と、登録不要で使える年収査定について調べた記事にまとめています。
2. 転職エージェントに相場を聞く
求人票に出ていない条件交渉の余地は、エージェントが持っています。ただし1社だけだと、提示された数字が妥当か判断できません。
エージェントの選び方は特化型と総合型を求人数から比較した記事で解説しています。
よくある質問
Q. 開業すれば年収は上がりますか?
上がる可能性はありますが、収入は顧問契約数に直結します。勤務時と違って保証がないため、単純な比較はできません。
Q. 未経験から社労士事務所に転職すると年収はどのくらいですか?
求人票のボリュームゾーンは426〜503万円ですが、これは経験者を含む数字です。未経験の場合は下限側から始まると考えてください。
Q. 資格手当はどのくらい出ますか?
求人によります。月1〜3万円程度の設定が見られますが、基本給に含まれている場合もあるため、求人票の内訳を確認してください。
Q. 年収交渉はできますか?
できます。エージェント経由の場合、内定後の条件交渉を代行してもらえるのが一般的です。
この年収を見て資格を取りにいくと決めたなら、次は講座の話になります。価格は月1,000円台から27万円台まで開き、合格率の出し方も各社で違いました。並べたものは社労士の通信講座を「合格率の分母」で比較したにあります。
まとめ
- 「社労士の平均年収」は出典によって484万円〜1,134万円と2倍以上違う。数えた対象が違うため
- 転職で参照すべきは求人ベースの数字。ボリュームゾーンは426〜503万円
- 有効求人倍率は0.85。競争がある前提で準備する
平均値を眺めても、自分がいくらで評価されるかはわかりません。まず自分のランクを確認するところから始めてください。
この記事で確認したもの
対象:社労士の年収に関する公表数値(厚生労働省 職業情報提供サイト job tag/求人ボックス 給料ナビ ほか)
時点:2026年8月27日
やったこと:出典ごとに「誰を数えた数字なのか」を確認して並べました。484万円と1,134万円の差は、集計対象が開業か勤務か、募集条件か実際の支給額かという違いから来ています。数字そのものより、注記のほうを読んでいます。
書かなかったこと:開業社労士の平均年収。これを示す公的統計が存在しないため、推計値は出していません。
※記事内の数値は2026年8月27日時点で各出典を確認したものです。厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)の数値は令和7年賃金構造基本統計調査およびハローワーク求人統計データ(令和7年度)にもとづきます。求人ボックスの数値は同社が公開する集計対象求人の中央値です。

